蛇骨婆に引っ張られる形で新城が離れていく。

「ごめんね」
「え?」

新城が離れていった所でノンちゃんが僕の耳元で囁く。
「ジョージ君はわたしに人間へ戻ってほしかったみたいだけど、わたしは人間に絶望している事は事実だから戻りたくない……」
「……そう、ノンちゃんが決めた事なら僕は」
「だから、この世界でトップアイドルを目指す!」

ノンちゃんの言葉の意味を理解することが遅れた。
トップアイドル?

「え、この世界で!?」
「勿論、これでも人間世界で人気アイドルだったんだ。半分とはいえ妖怪になったならその世界でアイドルをやることにする。やっぱり、アイドルの事は大好きで本気だからね!」

そういって僕を見上げるノンちゃんの笑顔はなんといえばいいのだろうか本物に感じた。

「だから、わたしがこの世界でトップアイドルになった暁には迎えにいくからね!」
「え、迎え?」
「うん!わたしはジョージ君が大好きであの青鬼女から奪ってみせるから!」
「えっと、何を勘違いしているかわからないけれど、僕は別に」
「女の勘でわかるよ!ジョージ君は青鬼女に惹かれはじめている。自覚はないのかもしれないけれど、ずるずるいっちゃうとあの女にとられるからね。欲しいものは手に入れる。わたしは欲張りな女なの」

チュッと頬に温かい感触。

「じゃーねー!」

ローブを解除してくるくると回転しながらノンちゃんは妖怪達の中に消えていく。
きっと、これから妖界でアイドルとして活動していくんだろう。
彼女のファンには申し訳ないけれど、これも彼女が選んだ結果。

「千佐那か」

ノンちゃんは僕が彼女に惹かれていると言っていた。
おそらく事実かもしれない。
だけど、それを認めたくない自分がいる。
いつかはこの気持ちとも向き合わなければならないんだろうけれど。

「終わったか?」

後ろから新城が声をかけてくる。

「えっと」
「終わったみたいだな。だったら人間界へ戻るぞ。あっちでもやらないといけないことがある」