顔を顰めながらも雲川が虎の脇腹へ手刀を入れる。

「新城!」
「上出来だ!」

倒れた虎の足元に光と共に円形の陣が輝く。
光に包まれた虎は悲鳴を上げてのたうつ。
この光が嫌いなのだろうか?
ユメがみていると、光が収まり、虎の姿が消える。

「…………これで、終わり?」
「あぁ」

緊張の糸が切れた事でぺたんと座り込むユメへ新城が近づく。

「これでアンタを困らせていた家の問題はすべて解決……あぁ、解決ついでに」
「え?」
「余計なお節介しちゃう」











その後、不幸のどん底だったユメの人生は少しずつ、ほんの少しずつが良い方向へ状況が変わっていく事になるがそれは別の話。

「どうだった?ユメちゃん」
「都先輩!本物です!とっても凄かったです!」

バイト先で都に尋ねられたユメは後になって湧き上がってきた興奮を伝えた。




「あれでよかったの?」
一仕事を終えた僕は先を歩いている新城へ声をかける。

「あれで良いんだよ」
「疑ったりしないかな?」
「それはないだろう」

僕の疑問に迷うことなく答える新城。
あの家の呪いを解呪した後、新城が依頼主である浜口ユメさんに伝えた事。
タヌキの置物を大事にすること、家から少し移動した先にある祠を定期的に掃除するというもの。

「紹介という形だが、あの女は良い人間の部類だ。助けてもらった恩はどういう形であれ返す……そういうタイプだと感じた」