「はぁ、はぁ、はぁ……」

乱れる呼吸を必死に整えながら僕は屋上に足を踏み入れる。
ドアを開けた瞬間、衝撃が僕に襲い掛かった。
屋上の中心地、そこでサバイバルナイフ相手に身の丈のある刀を操る千佐那。
刀を躱しながら彼女の懐に入り込もうとするノンちゃん。
見てわかる。
この戦いに普通の人が割って入ることはできない。
でも、僕はいかないといけない。
意を決してあの二人の戦いの中に踏み込もうとした時。

「ジョージ君、みぃーっけ」

全身に突き刺さる冷たい殺意。
その場から離れようとするも。

「アハハッ、逃がさないよ?」

頭上に広まる影。
纏ったローブが網みたいに広がっていく。
広大で走っても逃げきれない。

「つーかまえ」
「させん!」

千佐那が僕を抱きしめるようにして抱えて跳ぶ。
地面に陥没を作る程、地面を蹴りながら広がるローブの網から逃れることに成功した。

「大丈夫か?お前様」
「千佐那……さん、どうして」
「さんは不要だ。私とお前様の関係だからな」

小さく微笑みながら彼女は僕を地面に降ろす。

「貴様、お前様を食べようとしたな?」

僕に向けていた温かい笑みから一転して冷たい目でノンちゃんをみる。

「わたしの欲しいものだもん、どんな手段を使ってでも手に入れる。あまり乱暴な事はしたくないんだよねぇ~。だから、ジョージ君、こっちにきてよ」
「ノンちゃん」

いつもみていた変わらない笑顔を浮かべる彼女に僕はなんと声を掛けたらいいのかわからない。

「大人しくこっちにきて、わたしのものになってくれたらそこの邪魔な奴に手を出さないし、こんなもので傷つける事だってしないよ?」