「あんなことになっているけれど、僕がいかなくて本当に良かったの?」

パソコンの画面の向こうで行われている二人の少女の戦い。
そこからほんの少し離れた所にあるネット喫茶。
リクライニングシートに腰掛けながら僕達は二人の戦いをみている。
本当ならあの場所にいるのは彼女ではなくて僕だった。

「本当なら責任を取ってお前がいくべきなんだが、なにせ、ジャックとお前は相性が最悪だ」
「相性?」
「これだよ」

画面を操作して表示されたのはどこかの掲示板。

「これは、都市伝説サイト?」
「あの中途半端怪異女はこのサイト、もっといえばネットの海の言葉で力を得ている。ここ」

新城がカーソルをある部分に動かす。

――ジャックは愛しい人の前で無敵になる。

「何これ?」
「この書き込みの為にお前がいけば絶対にジャックが勝つ」
「こんな変な書き込みで?」
「さっき話しただろ?電子言霊って」

新城がこの場所へ来るまでに説明してくれたノンちゃんを怪異に陥れようとしている力。
この力をどうにかしないとノンちゃんを怪異から解放することが出来ない。

「でも、どうやるの?」
「その為に時間稼ぎとして青鬼の女が……ついででそこの女がいるんだよ」
「アタシはおまけ扱い!?」

隣のリクライニングシートに腰掛けているもう一人。
瀬戸ユウリさんに僕は視線を向ける。

「彼女が役に立つの?」
「今回に限って、な。生憎、俺はパソコンだの、ネットだの不得意だ。お前も苦手そうだし。驚くことにそこにいる女は得意だっていうから連れてきた」
「アンタ達、感謝しているのかバカにしているのかどっち?」
「「感謝しておりますとも」」

僕と新城の心からの言葉に瀬戸さんはなんともいえない表情をしている。

「それで、アタシが呼ばれた理由は?」
「さっきも話したが、この掲示板に書かれている内容が厄介な事にあの半分怪異女に力を与えている。ここの書き込みをどうにかしないと雲川も満足に使えない。つまり」
「いやいや、アタシに書き込みをどうにかできる力はないよ!?」
「そこはわかっている。だから」

ポンと瀬戸さんの頭に手を置きながら彼女の前にルーズリーフを机に置く。