怪異や様々な出来事に遭遇しないとわからない濃厚な殺意。

「折角、二人っきりの世界でジョージ君と永遠の時間を過ごすつもりでいたのにさぁ、邪魔だよねぇ」
「ノンちゃん」
「待っていてね、ジョージ君、すぐにキミを……」

ぴたりと急にノンちゃんが動きを止める。

「あーぁ、すぐにでもジョージ君と幸せになりたかったのに邪魔がきちゃった。仕方ない。またすぐに会おうねぇ?」

ヒラヒラと手を振ると纏っているローブを翻す。
ローブを翻した瞬間、強風が吹いて視界が塞がれる。

「わ、なに!?」

驚いて倒れそうになる瀬戸さんを支える。
強風が収まるとノンちゃんの姿はどこにもなかった。

「いない、ノンちゃん」
「逃げたようだが、あれはまた来るぞ」
「正解だ」
「凍真!?アンタ、今までどこにいっていたのよ!?」
「遠方からこれでも急いで戻ってきた。しかし、お前も変な女に狙われる運命の星にでも生まれたか?」

呆れた様子の新城に僕は言葉が出ない。
彼女が怪異だった事に気付いていれば。

「言っておくが」

ビシッと指が目の前に突きつけられる。

「お前は怪異に気付けるような特殊な力がある訳じゃない。あの女がいつから都市伝説怪異になっていたかなんて誰にもわからない」
「それは、そうかもしれないけれど」
「うだうだ悩んでいる暇はないぞ」

新城が僕の胸倉を掴む。

「俺が来た事を察して都市伝説怪異は逃げた。どんな“状況”にあるのかわからない以上、最悪な状況を想定しなければならない。言いたいことわかるよな?」
「ノンちゃんを祓うって事?」
「最悪の事態になればそうなる。だから」

――最悪の事態になる前に動け。

言葉にせず、新城の目が僕に伝えてくる。

「わかった、僕は、何をしたらいい?」