「ノンちゃん?一体、どうしたの?」

腕を掴まれた僕は先導する彼女に従う形で歩いているんだけれど。
さっきから人通りが少ない道を歩いている。
あの男がもしかしたら現れるかもしれないという危険性を伝えているんだけれど、返事がない。
しばらくして、校舎の日航が差し込まないような薄暗い場所へやってくる。

「ノンちゃん、一体どうしたの?さっきから何か」
「ねぇ、ジョージ君」

僕の話を遮って振り返るノンちゃん。
なんだろう、いつもと――。

「わたし、ジョージ君が欲しいの」
「え?それは、どういう」
「だからさ」

ノンちゃんが僕を見上げてくる。
その瞳に怪しい輝きが含まれているような気が――。

「わたしのものになって」
「させん」

横から巨大な刀が振り下ろされた。
衝撃で視界が揺れる。

「大丈夫か?」
「千佐那、さん」

名前を呼ぶとぶるりと彼女は体を震わせる。
僕が彼女の名前を呼ぶとどうも……その、興奮してしまうらしい。

「やはり、お前様に名前を呼ばれるのはとても嬉しいぞ」

微笑みながら彼女は身の丈もある刀の先をノンちゃんへ向ける。
ノンちゃんは先ほどまでの笑顔から一転して冷たい目で千佐那をみていた。
短い期間だけど、こんな冷たい彼女の目をみたことがない。
一体、彼女に何が。

「雲川!大丈夫!?」

慌てた様子で僕に声をかけるのは瀬戸さん。
彼女の必死さにようやく僕は自分に何が起ころうとしていたのか理解する。

「先程はわからなかったが、今はわかるぞ。貴様、人を辞めているな?」
「え?」

千佐那の言葉に僕は驚いてノンちゃんをみる。

「あーぁ、もう少ししてからジョージ君に告白して驚かせようと思ったのに、台無しだよ。本当に」

舌打ちしながら指先で銀色に輝くサバイバルナイフで遊びながらノンちゃんが笑う。

「本当に邪魔だよなぁ、お前ら」

その笑みをみて背筋が凍るような殺意を感じた。
普通の女の子が放つには異質すぎる。