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「あ、やっぱり雲川の所にいたんだ。千佐那(ちさな)」

彼女に頼まれて校舎を案内することになった僕の所に瀬戸さんがやってくる。
先ほどまで体育祭の行事に参加していたのかな？少し汗をかいていた。

「瀬戸さん、彼女が来る事を知っていたの？」
「ミズチから連絡があって千佐那が人間世界へ向かったからもしかしたらそっちいったんじゃないかって」

携帯電話を僕に見せてくる。
画面をみるとミズチ様からのメールが載っていた。
どうやら彼女と文通ならぬメールのやり取りをしているみたい。

「ところで、アンタ、何をしに人間世界へ来たのよ？」
「決まっている。旦那様へ会いに来たのだ。あれから全く連絡も会いに来ることもなかったからな」
「……雲川、アンタ」

ジト目で僕を見る瀬戸さん。
まるで僕が悪いみたいな目を向けてくる。

「デキル妻というのは旦那の下へはせ参じる必要があると聞いた。旦那様の通う学校は楽しいことをしていると聞いたぞ」

どこからその情報を仕入れてきたのだろう。
明らかに体育祭に参加しようと考えている。目がキラキラしているもの。
仮に体育祭を見に来たとしても彼女は部外者なので参加することはできない。

「とりあえず妻という話は置いておいて」
「む？」
「そろそろ僕から離れてくれない？ぴったりとしがみつかれて歩きづらくて」
「久方ぶりのお前様との逢瀬だ。戦うこと以外にこんなドキドキすることがあるなんて知らなかった。これもすべてお前様が教えてくれるのだ」
「力強くなっている。ちょっとミシミシって」
「ジョージ君！」

引きはがそうとした所で大きな声が響く。
振り返るとズンズンと近づいてきたノンちゃんが無理やり僕と千佐那を引きはがす。

「乱暴だな」

叩かれた箇所を手で払うような仕草する千佐那。
やってきたノンちゃんは僕の腕を掴むと引っ張っていく。

「行こう！ほら！」
「え、あ、ちょっと！？」

止める暇もなく引っ張られていく。

「あ、えっと、瀬戸さん、彼女の事、お願い！」

一人にすると絶対とんでもないことになるから。
僕の意図が伝わったのかわからない。
瀬戸さんは「いってらっしゃい～」と手を振っている。
千佐那は無言で去っていく僕らを見ている。