「ふむ、父上から見聞を広める許可を脅して……コホン、許可を頂いたのだ。ミズチ様が言うにはお前様の学校が何やら行事をしているという事で見に来たのだ」

すすすと近づいてきた千佐那は僕に抱き着いてきた。

「すんすん、久しぶりのお前様の臭い。不思議だな。少し前までは興味もなかったが、今はとても愛しく思えるぞ」
「近い……あと、痛い」

掴まれている腕がミシミシと悲鳴を上げている。
普通の人だったら粉々にされていたかもしれない。

「お前様の元気な姿を見れてとても嬉しく」
「あの!」

僕と千佐那を引きはがすようにしてノンちゃんが叫ぶ。

「ジョージ君、この人は誰?」

いつもの笑顔を浮かべているけれど、口の端がひくひくと震えているのは錯覚だろうか?

「えっと、非常に説明が難しく、彼女は」
「千佐那と夫婦の関係にある」

説明しようとする前に彼女がノンちゃんは告げる。
余計に誤解が生じる。
慌てて説明しようとしたら。

「ハハッ」

ゾワッと僕の全身に鳥肌が立つ。
今の、なんだ?

「夫婦?何それ、ふざけているの?」
「?」

ノンちゃんに見られてきょとんとしている。

「ごめん、気分が悪いから」
「大丈夫?僕もついて」
「いい、ごめん」

そういって彼女は教室を出ていく。
残された僕は追いかけることもできなかった。

「お前様、さっきの女は誰だ?」

笑顔を浮かべながらポキポキと拳を打ち鳴らす彼女を最初になんとかしなければならなかった。