突然の事に理解が追い付いていないのだろう、目を白黒させている霊媒師に新城凍真は懐から二枚の札を取り出す。
ボッと一枚の札に炎が灯る。
青い炎。

「ひ、ヒが!?」
「あ?こんな初歩的な術をシンジョウトウマと名乗るのなら使える筈だよなぁ?あぁ、もしかして、こんなチンケな術何か覚える必要がないってか?そうだよなぁ、そうだよなぁ……じゃあ、ダイナマイトクラスの威力がある爆発札でも使いますかぁ?」
「あ、ひぃ」

叫びと共にもう一枚の札をぺたりと霊媒師の頭へ貼り付ける。

「有名なシンジョウトウマなら知っているだろうけれど、い、ち、おう、説明しておいてやるよ。ソイツは爆発札(ばくはつふだ)、一定の時間が経過すればドカン!と爆発する特殊な術が施された札だ……この意味はわかるよなぁ?」

じりじりにじり寄っていく。

「あと、さ」

にこりと優しい笑顔を浮かべた瞬間。

「だぁれが、チビだぁあああああああああああああああああああ!」
「ひ、ひひひぃぃぃいいいいい!?」

わき目もふらずに逃げ出す霊媒師。
途中でもつれそうになりながら必死に頭の札を剥がそうと手を動かして去っていく。

「…………新城、やりすぎだよ」

沈黙を保っていたもう一人、雲川丈二(くもかわじょうじ)が新城凍真へ声をかける。
本物の新城凍真はホクホクした表情だった。

「あんなでくの坊がよもや、俺の名前を名乗るなんてなぁ、あぁ、本当にすっきりしたよ」
「あれじゃあ、どっちが悪人かわからないよ。爆発札なんて物騒なものを貼り付けて」
「爆発札じゃないぞ。あれは」

落ちていた石を蹴り飛ばして新城は二人をみる。

「え?」
「でも……さっき」
「嘘だよ。呪いとは如何に相手を化かすかにかかっている。あんなド素人に使うのは勿体ないが、舐められたままっていうのは我慢ならないからな。爆発札と別の札を貼った」
「そ、そうなんだ」

本気であの偽物を爆発させていたのでは?そんな疑問が過りながらもユメは偽物が去った事に安心の表情を浮かべる。

「これで解決……なのかな?」
「いいや、まだだ」