「言霊は別の場所で使えることができたんです。えぇ、電子の海という場所で」
「ネットの海、確かに最近は裏サイトやら情報をまとめたサイトが沢山あるが、お前、まさか」
「電子の海の言葉、あれを言霊と同じような仕組みへ変えましたの。電子言霊と名付けましたわ」
「お前、それが何をもたらすかわかっていっているのか?」

言霊は人の口から出て力を発揮する。
電子言霊は人が電子の海へ文字や言葉を打ち込む事でその力を発揮するというのならば、今後、様々な怪異が電子の海で力を得られるようになるという事だ。
そんなことになれば、今よりも事態が悪化していくだろう。

「えぇ、これから先、電子の海は広がり続ける。つまり都市伝説怪異も力を増し続けるという事です。楽しい事がまだまだ続くんです」
「楽しい?」
「えぇ、まだまだ私と新城凍真様のお遊びが続くんですもの」

妖美を漂わせ、笑顔を浮かべる彼女に対して新城の表情は険しくなる。

「あぁ、でもご安心ください。今回、都市伝説怪異で私が関わっているのは二つだけ。今しがた、貴方が封印したコレクター、そしてもう一つ」
「……ジャック」

パチパチパチと拍手の音が響く。

「正解です。今回はこの二つだけ私が関わっています。他はどうなるか、電子言霊の力次第ですね。作ってみたものの、どことなく不完全でまだまだ試作というところなので二つに抑えたのです」

その時、彼女の瞳に若干の変化があったのを新城は見逃さなかった。
敢えてその事を指摘せずに別の事を尋ねる。

「都市伝説怪異に手を出したから陰陽塾の連中が出て来ている。手を引くなら今のうちじゃないのか?」
「あらあら、心配してくれているのですか?こんな怪異になった私を?やはりお優しいですね。新城凍真様」

でも、と彼女は首を振る。

「まだです。えぇ、まだです!私のやりたい実験終わっていないのですよ。コレクターははじまり、私の本当の目的はジャックにあるのですから、そう、ジャックを生み出すことが」
「お前、まさか!」

新城が彼女へ詰めようとした時、地面が揺れる。

「いけませんわ。まだ、私とあなたのダンスの時間までまだまだ先なのですから」

バランスを崩した新城の頭上から響く。
志我一衣の姿はどこにもない。