茂みをかき分けながらゆらりと現れる都市伝説。
コレクター。
こちらを見下ろしてくる相手に新城は表情を変えない。

『もう、急にいなくなったから慌てちゃったよぉ、お姉さんに黙っていなくなるなんて悪い子~』

ニコニコと満面な笑みを浮かべてこちらをみてくるコレクターに新城は沈黙を貫く。

『あれ?今日は静かだね?もっと会話を楽しもうよ?今日で最後なんだからさぁ』

普通の人がみれば発狂しそうな笑顔を浮かべる
だが、新城は平然としている。
それどころか反応すらしない。

『??』

新城の態度に首を傾げながらゆっくりと近づこうとする。
白い指先が新城へ伸びた。
バチンと指先に痛みが走る。
彼が展開した結界が邪魔をしていた。

『で、も、む、だ♡』

バチバチと大きな音を立てる。

『この程度の力でお姉さんの愛を止められるなんてことはできないから』

最後にボッと貼られていた結界の札が燃え出す。
炎は一気にすべての札を燃やし尽くした。

『これでお姉さんとキミを阻むものはないねぇ』

ニタァと恐ろしい笑みを浮かべながら一歩、また一歩と前に踏み出す。
スカートの裾から覗く蜘蛛の脚。
カサカサと音を立ててゆっくりと近づこうとした時。

『っ!』

何かに気付いて宙を舞う。
少し遅れて地面にぽっかりと穴が出来ていた。

『びっくりしたなぁ』

頭上の木の幹に複数の脚でしがみつきながらコレクターは笑う。

『この仕掛けも失敗したねぇ。悪あがきもこれで終わりかな?』

スタッと着地する。
コレクターと新城の距離はわずか三十センチ程度。
見下ろすコレクターに新城は表情を変えない。

――ようやく手に入る。

胸中で湧き上がる興奮にコレクターは表情が崩れる。
興奮しているコレクターはこれからの事に思いを馳せていた。