「それはこちらのセリフです。貴方、誰ですか?」

視界に入れさせないように注意しながら僕は男の前に立つ。

「お、お前、NEONちゃんのなんなんだ!?まさか、彼氏だとでもいうのか!?」
「誰か知らないけれど、彼は男です。貴方の言うネオンとかいう人じゃない」
「う、嘘だぁ!騙そうたってそうはいかないぞぉ!僕にはわかる!彼女はNEONちゃんだ!」

血走った目をぎょろぎょろと動かしながら男は叫ぶ。
目の焦点が定まっていない。
何者かわからないけれど、この人は危険だ。

「人違いです。悪いですけど、失礼します」

ノンちゃんの手を掴んで去ろうとした。

「ま、まてっ!」

男が彼に手を伸ばしていく。
マズイ。

「わっ!」

咄嗟に腕を強く引っ張ってノンちゃんを引き寄せる。
抱き寄せる形になったけれど、男の手が空を切ったからよしとしよう。

「じ、ジョ」
「静かに」

彼の耳元で囁く。

「ここは僕に任せて、あの人の方をみないように強くしがみついて」
「う、うん」

ギュッと抱きしめてくるノンちゃん。

「あ、あぁ!?」

男が目を見開いて叫ぶ。

「もっと」
「こ、こう!?」

ギュゥゥゥゥとさらに強く抱きしめられた。
大事なものを包み込むように優しく抱きしめ返す。

「あぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

目の前の光景がよほどショックなんだろう。
男は頭皮に爪が食い込むほどにかきむしっている。

「返せ……!」

小さく呟いた後、男は鞄からあるものを取り出す。
銀色に光るもの。
それはナイフだ。