「いやぁ、とても楽しかったよ！」

とても疲れた。
僕の横で満足した様子のノンちゃん。
学校でここまでの疲弊を感じたのは久しぶりだ。

「どうしたの？疲れちゃった？」
「そうだね。あっちこっちと動き回っていたからね」

体験入学という形で生徒になったノンちゃん。
女子の制服を着ていた事から男子達が砂糖に群がるアリのようにどこからともなく現れては声をかけていく。
瞬く間にアイドルみたいに人気者になったノンちゃんは体育祭の準備に引っ張りだこだった。
当然、彼女の面倒を見る事になっている僕もあっちこっちへ振り回される形になる。
特別クラスで新城や瀬戸さん、芥川君以外の学生と触れ合う事がなかったから戸惑いの連続。
体育祭が終わるまでは学生として一緒に通うのでこの状況は続くんだろう。

「学校はとても楽しいところなんだね！」
「……ノンちゃんは学校に通ったことなかったの？」
「一応、学生だったんだけど、色々あって通えなくてねぇ。こうも楽しいと毎日、学校に通うのもありだねぇ」
「楽しいなら良いかもね」
「流石はジョージ君！わかってくれて嬉しいよ！」
「抱き着く必要ある？」

ギュッと僕の腕に抱き着いてくる。
同じ男とは思えないほど、柔らかい体つきしているなぁと思っていると。

「見つけた、見つけたぞ！」

前方から大きな叫びと共に薄汚れた格好をした男が近づいてくる。

「あの人、一体」

男は血走った目で僕ら……ノンちゃんを見ていた。

「ど、どうして」

腕に震えを感じて下をみると、ノンちゃんが強く腕にしがみついている。
その顔は青ざめて、怯えていた。
目に浮かぶ感情は恐怖。

「ＮＥＯＮちゃん！ＮＥＯＮちゃんだよね！！」

血走った瞳の男はノンちゃんを指さして近づいてくる。
彼の怯え具合にただ事じゃないと思って男の前に立つ。

「な、なんだよ、お前！」