「あの女、なんでアタシに敵意を向けてくるのか」

瀬戸ユウリは廊下を歩きながら先ほどの出来事を思い出す。
ノンと名乗っていた少女は自分へ明らかに敵意を向けていた。
異性、同性に色々な視線を向けられてきた彼女はそういったものに敏感になっている。

――そういう視線に敏感というのはいざという時、役に立つ。

ふと、新城凍真から言われた事を思い出す。
特別クラスから一時的に自分のクラスへ戻ることになった際に伝えられた言葉。
色々と教え込まれた事を実践した事で女子生徒達と仲良くなることは成功した。
そのせいか男子達が前みたいにワラワラと集まってきた事は鬱陶しいことこの上ないものだった。
特別クラス内で三人と過ごした時間は素敵なものだったが、同じ学年の生徒達と話すことも楽しい。
それでも、特別クラスの二人と一緒に居たいという気持ちは強い。
今も雲川を見つけて話しかけたらノンが現れる。
ノンは明らかに自分へ敵意を向けていた。
あの敵意は自分という異性が雲川の傍にいたからだろうか?

「雲川も罪な奴だなぁ」

仲良くしている二人の姿をもし、あの青鬼がみてしまったら。

「それは、それで修羅場か」
「瀬戸さーん」
「あ、はーい」

グラウンドの入口から自分を呼ぶ声。
ユウリは反応して声の方へ向かう。







「よー、待っていたぞ。新城」
「あぁ」
「しかし、悪かったな。学校の行事でバタバタしている中で」

新城凍真はビニールシートで周囲が覆われている場所へ来ていた。
周囲にはパトカーではなく黒い車やバンが数台、展開されている。

「いいや、俺も他人事じゃないからな」
「何か言ったか?」
「いいや……チッ」