言われて気付く。
近道をしようと思って狭い道を選んだんだった。

「そうみたいだね。ごめん、気付かなかったよ」
「うんうん、素直に謝ることは好感がもてる」
「僕に何か用事?」
「あー、うん、実は困っていてね。助けてくれないかな?」
「いいよ」
「いきなりで戸惑う……あれ、いいの?」

そこで僕はようやく相手をちゃんと見た。
ファッションに疎い僕から見ても今どき?といえるような服装で、黒いマスクで口元を隠し、腰まで届きそうな髪をシュシュ?みたいなものでひとまとめにしている。

「困っている人を放っておくことはできないし」
「おぉ、お兄さんはとても良い人だ!おっと!」

急に両手を前に出してくる。

「助けてくれるのは感謝するけれど、先に伝えておくよ。わたしは男だからね」
「あー、そうなんだ?」
「うん!服装が女の子ポイとかそういうのは気にしないでくれ、趣味なんだ」
「人の趣味にとやかく言う事はしないから安心……して?」
「それは良かった。実は」

目の前の男の子、名前を桜木ノンというらしい。
彼は家を出て各地を旅していたらしいんだけれど、道中で財布を落とした。
警察に届け出を出しているものの、住む場所も見つけていない所で僕と出会ったらしい。

「お願い!五日!ううん、今晩だけでもいいから助けて」
「良いよ」
「……え、本当にいいの?私、男だよ?」
「なんで男をそんなに強調するのかわからないけれど、困っている人を外に放ってなんてできないし」

何より怪異に狙われる危険もある。
最近、物騒だし、この後何かあったら後悔もしてしまう。
それなら、助けたいという事を伝えた。

「お兄さん、とても良い人だね!わたしのことはノンと呼んでいいよ!」
「ノンさん」
「ノーノー!ノン!」
「ノンちゃん」
「お兄さん、頑固者でしょ」
「どうだろう?」

首を傾げる。

「まぁいい、そこは何度も指摘していけばいいだろう、そこまでしなければいけないものか微妙なものだけど」
「うん?」
「ううん、なんでもないよ」
「そう?ならいこうか。叔父さんにも説明しないといけないし」
「オッケー!いやぁ、良い人に出会えましたよ」

嬉しそうにスキップしながら先を歩くノンちゃんを追いかける。