夜。


体育祭と文化祭の準備にひと段落がついて帰宅途中の女子生徒。

「シシシシシシ」

少し離れた所で彼女を尾行する約240cmの女性。
――白いドレスを纏っている。

――長い髪に隠れて素顔はみえない。

――足元も大きなドレスのスカートに隠れているためわかりにくいがガリガリガリと何かを削るような音が複数、聞こえてくる。
彼女こそが“コレクター”と呼ばれる都市伝説の怪異。
口元から同じ言葉を繰り返しながら段々と女子生徒へ距離を詰めていく。
やがて白い指先が彼女へ触れようとした瞬間。
ピタッとコレクターは動きを止めた。
女子生徒は気づかずにそのまま歩いていく。

「シシシシ」

コレクターは振り返る。
振り返った先で長い髪に隠れていた目が大きく見開かれた。



「止まったけれど、どうするの?」

新城が術でコレクターの気を引くことに成功した。
僕は彼を守るようにしながらも指示を待っている。

「まずは交渉だ。気が向かないけれど」

溜息を吐きつつも新城は前に踏み出して声をかける。

「アンタ、コレクターだな?」
「……」
「俺は祓い屋だ。アンタが人間に手を出すというのなら単刀直入に言う、すぐにやめろ」
「……」
「もし、今すぐ手を引いて立ち去るというのなら見逃す。もし、引かないというのなら悪いが、アンタを――」

沈黙していたコレクターが細長い手を前に伸ばす。
そのまま指先が新城に向けられた。
何かある?
僕が十手を手に取ろうとした時。
風が吹いた。
数メートル離れた所にいたコレクターがいつの間にか僕を抜いて新城の前に立っていた。

「え!?」

視えなかった。