僕、瀬戸さん、新城はそれぞれのクラスへ戻っている。
文化祭が終われば再び、特別クラスへ戻ることが出来るんだけど。

「瀬戸さんはともかく、僕と新城は浮いているなぁ」
「知るかよ」

クラスメイト達に呼ばれて楽しそうに去っていく瀬戸さんを見送った僕の後ろ。
丸椅子をいくつか並べた簡易ベッドで寝ている新城が片目を開ける。

「いいの?新城は新城のクラスに行かなくて?」
「興味がない。体育祭なんてやる気がある奴だけがやればいいんだよ」

興味ないという態度で寝返りをうとうとした新城を僕は止める。

「すまんな」
「いいけど、最近、寝ていることが多くない?」
「どうだろうな……怪異の仕事が多いからか」

怪異、それは呪術や幽霊、妖怪等の総称。
人が普段、関わることがない存在だが、時として人に牙をむく。
そんな怪異を祓う事を新城と僕は生業にしている。
生業といっても僕は手伝いだけど。
ここの所、怪異が連続発生していた事から僕達は昼夜問わず、奮闘していたから疲労が蓄積しているのかもしれない。
欠伸を噛み殺しながら再び、睡眠を始める新城。
本来なら僕達もクラスの一員として体育祭の種目に参加しなければならない。

「悪評が多いからな、僕」

クラスメイトの何人かが元幼馴染の起こした呪術で暴走した経緯が噂として尾鰭がつきまくって僕は危ない人になっている。
剣道部の芥川君は噂を信じる事無く接してくれるけれど、全員がそういうわけじゃない。
今も離れた所でひそひそと話をしている体操着姿の生徒達の姿がある。

「気にするな」

半眼で新城がこちらをみてきた。

「大丈夫、気にしてないといったらウソになるけれど、僕に新城がいるから」
「そうかい」

僕に背を向ける新城。
照れているのだろうか?
その事を尋ねようとしたところで急に新城が体を起こす。

「新城、どうし」
「シッ」

言葉を遮って新城が静かにするように言ってくる。
ある方向を見ていることに気付いて、耳を澄ませてみた。