課長の怒号を上回る怒鳴り声が、あんなに賑やかだった店内をシンと鎮めてしまった。
私が反発するとは夢にも思っていなかったんだろう。課長も先輩達もポカンとしている。

ーーーどうしよう。

言ってしまった。やってしまった。
何がまずいって、今までこういう修羅場をとことん避けてきたはずの私が今一番、言いたいことを言った解放感に包まれているんだ。

ーーー言えた。言っちゃった。

放心する私の手を、すかさず冬至さんが引いた。

「よく言った。おいで、月見さん。」

「………あっ、はい……。」

居酒屋から逃げるように退散する私達のことを誰も追いかけて来なかったのは、

去り際、私に見えないように、冬至さんが角を剥き出しにして睨みを効かせたからだということは、後々本人に教えてもらって知ることになる。