テッペン横丁に迷い込んだ日から2ヶ月が経った。
私は冬至さんとの約束通り、居酒屋 大江山の常連を続けている。

金銭面と体力面を鑑み、行くのは決まって毎週金曜日。
仕事終わりの0時(テッペン)を過ぎた頃。

いつ行っても冬至さんは温かく迎え入れてくれるし、虎ノ門さんのように突然現れるあやしい常連さんとのお喋りは楽しい。

上京して念願の和菓子屋を経営しているという小豆洗(あずきあら)いのおじさん。
先月5人目のお子さんが産まれて、育児疲れを大江山の絶品ご飯で癒すのが楽しみだという姑獲鳥(うぶめ)のお母さん。
一時期は全国で引っ張りだこだったけど、今はブームが落ち着いてきて、やっと一息つきに大江山へ来られたというアマビエさんなどが、特に印象深い。

どのひとの話も新鮮で、でも妙に人間くさい。あやしいひと達だっていうことを忘れさせるくらい真剣に現代を生きてる皆の姿に、畏怖なんてものはすっかり無くて、普通の人間と何も変わらなかった。

楽しいお喋りと、美味しいお酒と料理を堪能する。

私にとっては週の最後を締めくくり、新しい一週間を迎えるための、特別で大切な時間だった。