気持ちが通じ合えたことをイチさんにふたりで報告すると、彼女は踊りださんほど大喜びしてくれた。

「ええ、ええ。私はおふたりがこうなると、とっくに感じていましたけどね」
「イチ。落ち着きなさい」
「これが落ち着いていられますか! 佳月様。善は急げと申しますでしょ?」

 糸目をさらに細めたイチさんに、佳月様の警戒心が高まったのが伝わってくる。

「ああ。だが……」
「私におまかせください!」

 佳月様がなにかを言うより先に、遮るようにしてイチさんが宣言する。
 彼女はこれまでずっと佳月様を支えてきたのだから、ここまではしゃぐのも当然だろう。

「ああ、忙しくなりますねぇ。ええ、ええ。すべて、私がご用意しますから心配はいりませんよ」
「用意?」

 神様との結婚は、人間同士とのそれと同じなのだろうか。〝用意〟というからにはなにか儀式のようなものがありそうだが、私にはさっぱりわからない。

「ええ、ええ。まずは、ほかの神々へのお披露目ですね。ああ、これは人間の行う結婚式のようなものですから。綾目様はただ、お着替えをして佳月様の横で笑っていてくださればいいですからね」

 難しい役割はないようだが、なにより〝ほかの神々へ〟の部分が気になる。思い浮かぶのは、先日やってきた希道様だが、それ以外にいったいどれほどの神様が集まるのだろうか。

「それから、一番大切な初夜の用意ですね!」
「しょ、や?」

 ついオウム返しのようにつぶやいてしまったが、理解が追いついてたじたじになる。ぼっと音が聞こえそうなほど急激に熱を増した私の顔は、絶対に真っ赤になっているはずだ。

「あらあら。佳月様、よかったですね。こんなかわいらしい奥方様を迎え入れられて」
「それは否定しないが、イチ。少々配慮に欠けるぞ」

 佳月様の言葉が、私にさらなる追い打ちをかけてくる。

「あら、あら。初心な奥方様ですね」

 好きだと伝え合ったのは、つい少し前だ。そのわずかな間に、冷淡な雰囲気だった佳月様はすっかりなりをひそめ、私に対してとことん甘さを見せてくる。

 指を絡めるようにつながれた片手は放す気配がないし、空いたもう片方の手は常に私の髪を梳いたり掬ったりと忙しそうだ。ついでに口づけられているようだが、恥ずかしさのあまり確認はできていない。

「綾目が真っ赤になってしまったではないか」

 それは佳月様のせいもあるという私の主張は、イチさんが代弁してくれた。

「いやですねぇ、佳月様。殿方からそんなふうに触れられては、綾目様が恥ずかしがるのも当然ですよ。ええ、ええ。佳月様のそのような振舞は、嬉しい限りですけどねぇ。こんな佳月様は初めてですから。私だって、控えるようになどと無粋なことは言いませんよ」

 なんだかんだいっても、イチさんはやっぱり佳月様寄りだった。主を諫めるにとどめおいてくれればいいのに、浮かれた彼女までも私を言葉で攻めてくる。