秋汰と一緒に教室へと入ると、クラスの女子二人がこちらへと駆け寄ってきた。
「津村くん……あの”彼女”だれなの?」
「文化祭の日から噂はそれでもちきりだよ」
確かに、言われてみれば校門辺りから、すげぇ見られてる感覚はあった。
それが俺らに向けられてるとは思ってなかったから、気にしていなかったけど……
「ねぇ、彼女いないんじゃなかったの?」
女子二人はグイグイと問い詰めてきた。
彼女いないなんて誰かに話した事あったっけな……なんて他人事でいれるはずもなく。
「ちょっと、なんでだんまりなの?!」
「いや……その……」
返答に困り焦っていると、秋汰は俺の手を引いてくれた。
「つむは彼女おるから、あんまり近寄ったらあかんよ」
多分、俺がなんて答えていいのか迷っていることはお見通しだったんだろう。
秋汰は冗談を言うようなテンションで女子二人を軽くあしらってくれた。
……彼女か。まぁ、秋汰は彼氏っていうより彼女だもんな。
なんて直接言ったら……秋汰、怒るかな?
「そ、そんなの分かってるし! 秋汰のバーカ!」
女子二人はそれが面白くなかったのか、ふいっと顔を背けると、自分たちの席へと戻って行った。
やっとの思いで落ち着いて自分の席へとつく。小さくため息を吐いて椅子に座ろうとした瞬間……
「あの、津村くん……」
呼びかけられそちらを向くと、遠慮がちに目を逸らす花乃さんが立っていた。
「どうした?」
「あの、文化祭の日はごめんなさい……」
花乃さんは深く頭を下げた。
その声に気付いたのか、秋汰もこちらを振り返る。そして、そのまま秋汰と花乃さんの視線が交わり……
「秋汰。差別的なこと言って、本当にごめんなさい……。あたし、二人のこと薄々勘づいてたのに邪魔するようなことしたり……」
「俺は気にしてへんから、大丈夫よ。俺こそ、無責任に応援するとか言って……ほんまにごめん」
「……ううん。ありがとう、秋汰」
なんか……色々心配してたけど、上手く解決したみたいで良かった。