……なんでカップルコンテストに出るなんて言ってしまったんだよ……あの時ならまだ断れたのに。
秋汰とこんなふうになるなんて思ってなかったとはいえ……やめておくべきだった。
体育館へ続く外廊下を歩いていると、後ろから腕を捕まれて引き止められた。
「……やっぱり、出らんとってや……」
「秋汰……」
涙目で俺にしがみついてきた秋汰を放っておくことは出来ず、でもどうしていいか分からなくて戸惑う。
「ごめんな、こんなワガママ言ったらダメやって分かっとるけど……」
「いや、ワガママじゃないよ。出るって言った俺が悪い」
「花乃ちゃん、絶対つむのこと好きやん……皆も応援しとるし……そんなの嫌やねん……」
……どうすりゃいいんだ……
花乃さんはさっきので諦めてくれたと思いたいけど、秋汰にとって問題なのは、クラスの皆や花乃さんの友達のゴリ押しカップリングなんだよな……
『二年A組の津村くん、いらっしゃいませんか?』
体育館からアナウンスが聞こえてきた。
最悪のタイミングで、俺らの番が来たみたいだ。
「つむ……」
今にも泣きそうな秋汰を置いていくわけもいかず、こんなふうにしてしまった自分に嫌気がさした。
もう、どうなってもいいや。
そう思った俺は、ステージへと向かった。