「つむは……俺のやからダメやっ……!」
そう言いながら秋汰は、俺と花乃さんの間に入り込んできた。
いつもの冗談ぽい感じとは違って、顔を真っ赤にしている。
ふわふわと巻いてあるロングの明るい茶髪とミニスカのメイド服は、パッチリとした目元と、ちいさな顔の秋汰によく似合っていた。
大事なぬいぐるみを離さない小さな子供みたいに、俺の左腕にギュッとしがみついている。
「……この前とやってること違うけど。いいの?」
「それは……」
そう問いかけると、秋汰は誤魔化すように目線を泳がせた。
もう、俺に気を使ってそういうことしなくていいから。
と、しがみついた腕を離すために距離を取ろうとする。
「そんなの……もう、いい……」
秋汰は離さないと言わんばかりに、さらにギュッと腕を絡ませた。
こんな大衆の場で、秋汰がそんな事をするなんて信じられなくて言葉を失い、唖然としていると、花乃さんの笑い声でハッと我に返った。
「え、待って? 男同士だよ? 冗談キツイって秋汰!」
「キャハハ」と甲高い声で笑う花乃さん。
秋汰の手は震えていた。
「津村くんが秋汰のとか、そんなわけないじゃん! 似合うわけないし」
花乃さんの言葉に、秋汰は泣きそうな表情をしていた。涙を堪えているのか、俯いて震えていた。
……なんで、こんなにもこいつのこと好きなんだろうな……俺。
「ごめん。それマジだから」
そう呟くと、俯いている秋汰の左頬に右手を添え、そっと唇を重ねた。
ゆっくりと離したあとも、驚きで口を開けたままの秋汰の耳元へと近寄る。
「覚悟できたってことでいい?」
「……つむこそ、俺のって自覚してや……」
「ん、ごめん」
秋汰の頭を優しく撫でると、そのまま秋汰の手を引いてその場を立ち去った。