この世のどこに本気で付き合ってんのに、恥ずかしいからって嘘だと誤魔化すカップルがいんだよ。

「わかった、もういいよ」
「なにが……? なんでそんな冷たいん……」
「冷たいのはそっちだろ。そんな俺と付き合ったことが恥ずかしいなら……もう好きにしてろよ。無理に俺に付き合うことないだろ」

 後ろから呼び止められながらも、これ以上何も聞きたくなくて、俺はその場を後にした。

 からかってくる奴なんてほっとけばいいじゃん。そんなの相手にしなくていい。

 結局秋汰にとって大切なのは……俺じゃなくて、周りからの評価、皆からどう見られてるか。だったんだな。

「あ、津村くん! 一緒に屋台まわろ?」

 階段を降りると、もう文化祭は始まっているようで花乃さんが声をかけてきた。
 赤いミニドレスを着ている花乃さんは、いつもとは違ってかなり大人びて見えた。

 本当なら断るところだけど、クラスメイトからの圧がすごいカップルコンテスト中だから、仕方なく承諾した。

 それに、一人で過ごすのもなんだし、ちょうど時間も潰せそうだし……ある意味よかったのかもしれない。

「そういえば十二時からカップルコンテストのショーがあるみたいだから忘れないでねって三ツ矢さんが言ってたよ」
「ん、了解」

 十二時ってことは、あと三時間後か……

「ねぇ、津村くん。今日だけとはいえ、カップルにならないといけないんだから……手繋いでもいい?」

 花乃さんはそう言うと、遠慮がちに手を差し伸べた。

 さすがにカップルコンテスト中とはいえ、好きでもない人と手を繋ぐのは無理だ……。

 俺が”ごめん、それは無理”と断ろうとしたその時……