「やっぱり津村くんは素材がいいから、いつもより輝いて見えるね」
「……まぁ、優勝出来るように頑張るから」
更衣スペースを出ると、開店準備はもうできているみたいで、男子も女子もメイド服に着替え終えていた。
「あ……」
そんなことを考えていると、秋汰と視線が重なる。
「なんであの日途中で帰ったん……? 連絡も返してくれへんし……」
秋汰は恐る恐る俺に近寄り、話しかけてきた。
なんでって……分かんねぇのかよ……
「……別に」
「ちょっと教室出て話せへん……?」
「分かった」
そして俺たちは教室を出て、屋上へ続く階段の踊り場へと向かった。
これから何を言われるのか、気が気じゃなかった。
もし、あれは冗談だったとか言われたら……。そんな事を考えながら階段を上る。
「なんで返信してくれへんかったん……? ずっと心配やったんよ?」
「……お前があんな事言うからだろ」
「あんなことって……なんやねん」
自分でも口にしたくない。
心が痛くなる……キュって締め付けられるみたいに。
「俺と付き合ったの、ビジネスカップルがしたかったからなんだろ」
ほら、すげぇ苦しい。
こんなこと言いたくないし聞きたくない、そんなの知りたくなかった。
それならいっそ付き合わずに、振って欲しかった。
こんなに傷付いて、苦しい思いをしてるのは俺なのに、何故か秋汰が泣きそうな表情をしていた。
「あんなん誤魔化すためやん……!」
「誤魔化す……? マジで付き合ってんじゃねぇのかよ」
「そんなん、言えへんやん……からかわれるし……」
なんだそれ……。
つまり、俺と付き合ってんのが恥ずかしいから、誤魔化しただけってことだろ。