あの一件のあと、スマホを一度も開かずに夏休みが終わった。
 秋汰から本当のことを聞くのが怖かったのと、周りからの声が全て嫌に感じたから。

 本当なら今日学校に行くのすっげぇ嫌だ。
 でも……今日は文化祭だし、一日休んだところで、ずっと休むわけにはいかない。と、ため息をついて家を出て、いつも通り学校へと向かった。

 さすがは文化祭……。校門はカラフルなバルーンで彩られていて、校舎への道には両脇に様々な屋台が出ていた。

 去年は見れなかった景色に少しだけ感動しながら教室へと向かう。
 廊下も鮮やかな紙装飾で綺麗になっていて、ほかのクラスもかなり気合いが入っているみたいだった。

 お化け屋敷にプラネタリウムカフェ、フラワーアレンジメントやら……色んなジャンルの店が出ている。

「おはよ」

 小さく呟くように挨拶をし、教室のドアを開く。
 
 教室を見渡すと、秋汰はまだ来ていないみたいだ。
 駆け寄ってきた三ツ矢さんは誰にも聞かれないようにと小声で話し始めた。

「津村くん、茜くんと喧嘩したの? なんか……ずっと泣きそうな顔してて、メイクに時間かかってるんだよね」
「……別に。喧嘩ってわけじゃない」
「とりあえず、津村くんも着替えよっか。そこで話聞かせて?」

 俺は小さく頷いて更衣スペースに入ると、三ツ矢さんにこれまでの出来事を全て話した。

 秋汰と付き合ったこと、初デートで起きたこと、もしかしたら秋汰は本気で俺と付き合ったわけじゃなかったかもしれないってこと……

 本当だったらこんなこと、楽しい文化祭の前に話すことじゃないんだけど……三ツ矢さんは「引きずる方がダメだよ」と話を聞いてくれた。

「でもさ……茜くん、今日元気なかったし……本気じゃないわけないと思うよ?」
「……もうアイツから何も聞きたくない」
「それはダメだよ! ちゃんと話し合わないと」

 ずっとこのままってわけにもいかないし、それは痛いほどわかってるけど……
 また俺の勘違いだったら……? そんなの知るの怖い。