いくら夏とはいえ、長時間濡れた状態でいたら風邪ひきそうだし……そろそろ帰ったほうがいいか。
っていうのもあるし、これ以上キスしたりしてたら、止まんなくなりそうでこわい。
ただでさえ気持ちが同じってわかって死ぬほど嬉しいのに……幸せすぎてヤバい。
「はい、これ着て」
俺はカバンの中から自分のTシャツを出すと、秋汰へ手渡した。
「やっぱりつむの匂いするわ」
「だから、マジでその言い方やめろって。……返して」
「嫌や! ラベンダーとレモンみたいな匂い好きやねん」
ふつーに柔軟剤の匂いなんだけど……
まぁ、なんか気に入ってるみたいだし、いいか……
「送ってくよ。ほら」
右手で二人分のカバンを持ち、左手を秋汰へ差し出すと、秋汰は嬉しそうにその手を握った。
「……なに撮ってんだよ」
「なんも撮ってへんよ?」
秋汰は誤魔化しながら、スマホのシャッター音を鳴らした。
嫌がってる素振りを見せつつも、意外とこういうの、嬉しかったりする。
秋汰はよく俺のことを撮ってくれる。最初はすげぇ嫌だったけど……秋汰が撮ってくれた写真には、自分じゃない自分が写ってるみたいで。
俺って、あんなふうに笑ったりしてたんだって気付けたし、秋汰が撮ると別人みたいに垢抜けて見える。
それって、やっぱり撮ってくれるのが秋汰だからなんだな……って改めて思った。
「……今度デートでも行く?」
なるべく軽い感じに聞こえるように問いかけると、秋汰は嬉しそうに腕を絡ませてきた。
「ホンマに?! デートとか初めてやねん。めっちゃ楽しみやな」
「うん、俺も」
地面に映る、ピッタリとくっついた二つの影を眺め眺めながら、秋汰の家へと向かった。