文化祭の準備はある程度終わり、夏休みの登校は今日が最後になるみたいだった。
とはいえ、夏休みはあと半月も残っていない。
校舎を出るともう外は真っ暗で、秋汰に「早く帰ろう」と言おうとした瞬間。
「あれ、プールのドア開いとる」
秋汰の指さす方を見ると、いつもは閉まっている、プールへのドアが少しだけ開いていた。
「そうやん、今日掃除やって聞いたわ」
「ってことは夏休み終わったら、プール始まんのかよ……」
小さくため息をつくと、秋汰は何を思ったのかプールの方へと向かい始めた。
「まさかお前……」
「ちょっと行ってみん?」
ドアに手をかけ、ニッと悪い笑みを浮かべた。
バレてもしらねーからな。と思いつつも、今日はすごく暑いし、涼めるならいいか。と俺も秋汰の後へと続いた。
「ちょ、つむ! これ泳げるで!」
秋汰を追ってプールサイドへと足を踏み入れると、大きなプールには沢山の水が入っていて、反射した月を写していた。
それを見るなり、秋汰は自分の鞄をプールサイドに置いて、靴と靴下を脱いでズボンを膝まで捲りはじめた。
「ちょ、秋汰マジで泳ぐつもり?」
「そんなわけないやん! ちょっと足付けるだけやて」
秋汰ほそう言うとプールサイドに腰掛け、水の中に足を入れた。
俺も裸足で秋汰の隣へと歩いていき、足を水につけた。
「うわ、つめたっ……」
「ほんまやな。でも暑いし、ええんちゃう?」
秋汰はそう言うと、両手で水を掬って俺にかけてきた。
……マジでこいつ……
「ちょ、秋汰、やめろって」
「うは、冷たいわ」
同じように秋汰に水をかけると、秋汰は身体をひねらせながら冷たさに耐えていた。