「ちょっと、そこ! なにイチャついてんの! ……って、茜くん?!」

 三ツ矢さんが驚いたようにこちらへと駆け寄ってきた。
 その声に合わせて、クラス中の視線が俺らの方へと集中した。

「マジ?! 秋汰意外とかわいいじゃん!」
「こうやって見ると、二人お似合いじゃね? いつもベタベタしてるしな」

 クラスの男子は俺ら二人を舐めまわすように見ると、花乃さんが不在なのをいいことに、”お似合いだ”とはやし立てた。

 花乃さんとくっつけられるよりは遥かにマシだけど……こうやって色々言われるのは苦手だ。それがいいことであれ。

「分かるっっ!! 茜くんは犬系彼女って感じで、津村くんは猫系彼氏って感じだよね!! すっごい推せる!」

 三ツ矢さんは「この時を待ってました」と言わんばかりに涙を流しながら熱弁した。

 マジで毎度のことながら、そこまでガチになられると反応に困る。

「ちょ、ホンマにやめてや?!」

 ほら、秋汰すっげー嫌がってるし。
 でも、そんなあからさまに嫌がられると、少し傷付く。

「なんで俺が彼女なん?! おかしいやろ!」

 秋汰は三ツ矢さんの方へと駆け寄ると、それは違うと反論しだした。

 いや、そっち? そんなんにこだわるのかよ……
 つか、嫌ってわけじゃなくて安心した……

「つむが彼女やん! だっていつも課題見せたり、勉強教えるの俺なんよ?!」

 そんな謎理論をドヤ顔で言ってのける秋汰に、開いた口が塞がらない。
 なんで課題見せたり勉強教えてる側が彼氏ってなるわけ?

「でも、茜くん彼氏って感じしないよ!」
「それでも、つむは俺の彼女やねん」

 彼女彼女って……現時点でお前女装してんだからそんなわけねーだろ。
 泣き虫でヘタレで可愛いくせに。

 なんだか少しムカついてきて、得意げになっている秋汰の腕を引いた。

「お前が彼女だろ」

 それだけ言い残すと、呆気に取られている三ツ矢さんに「暑いから着替えていい?」と問いかけ、更衣室へと向かった。