しばらくすると、秋汰が気まずそうに教室へと戻ってきて、衣装合わせが始まった。

 今回俺の着なきゃいけない衣装は、黒のシャツの上に白ジャケットを羽織り、下は白のスラックス。派手なのはやめてくれって言ったはずだけど、これじゃかなり目立つ。

 もう衣装は届いてしまってるから変更は出来そうにないし、最悪だ。

「やっぱり津村くんはスタイルがいいから似合うね、これならバッチリだよ〜」

 三ツ矢さんは満足気に頷きながらそう言った。
 できればもう少し目立たない衣装だったら俺的にはバッチリだったんだよ。なんて思っていたら、途端に教室内が騒がしくなった。

「えっ、すっごい可愛い!」

 そんな女子の歓声と共に、教室内に入ってきたのは、メイド服を着た女子たち。

 ……いや、男子も数名混じってんな、これ。
 ってことは秋汰はどこだ?

 キョロキョロと当たりを見渡していると、後ろから背中をツンツンとつつかれ、びっくりして振り返る。

「…………」

 そこには、恥ずかしそうに目を逸らしながら手を後ろで組んでいる女子が立っていた。

 長い茶色の髪をふわふわに巻いたその女子は……
 短いメイドドレスを着ていて、俺より背が十センチほど低くて……

「えっ、もしかして……秋汰?」
「もう嫌や……こんなん本番は何時間も着とかなあかんのやろ?」

 いや、待って、それどころじゃないわ。
 可愛すぎ。

 女子たちにメイクまでされたのか、肌はいつもより白く、ほっぺたはチークでピンクに染めていて……

 なんていうか、今すぐ抱きしめたい。

「このカチューシャがうまく付かへんのよ」

 フリルのカチューシャを頭に付けようとするも、ウィッグのせいで浮いてきているのか、なかなかハマらないようだ。

「貸して」

 俺は秋汰からカチューシャを受け取ると、横髪と後ろ髪をわけ、耳の後ろにカチューシャを差し込み、少しクシャッとなった髪の毛を手でといてあげた。

「可愛いじゃん」
「ホンマに嫌や……」

 秋汰はピタリとくっついてくると、真っ赤になった顔を俺の腕に埋めた。