「そんな嫌なら、お前が三ツ矢さんと出れば……?」
無意識にポツリと出てしまった言葉に、後悔で押しつぶされそうになった。
「なんでなん……なんでッ、そゆこと言うん……」
「だってお前……」
「つむは花乃ちゃんのこと好きなんやろ?! 関係ないやん……!」
話をちゃんと聞いてくれない秋汰への苛立ちは、もう我慢できないほどに溢れていた。
なんで、なんで泣くほど嫌なくせに俺の話は聞いてくれないんだよ。
――あー、マジでもう……めんどい。
「一旦黙れよ」
俺は冷たくそう言うと、秋汰の背中を校舎の壁に押し付け、顎に手を添えて唇を重ねた。
「……俺が好きなのはお前だから。キャンキャン文句言うな」
目を見開き、顔を真っ赤に染めた秋汰から唇を離すと、俺はそう告げた。
「へ……? いや、……え?!」
ズル……と校舎にもたれ掛かるように腰を抜かし、座り込む秋汰。
「マジで花乃さんのこと、どーとも思ってないし。なんなら誰かに変わって欲しいくらいなんだけど」
「お、おう……」
「ん、分かってくれたならいいや」
俺はそれだけ言い残して教室へと戻ろうとした。
「え、ちょ、待ってや」
慌てて立ち上がった秋汰に腕を掴まれ、引き止められる。
「そ、それだけ……なん?」
赤く顔を染めて問いかけてきた秋汰。
それだけ……ってなんだよ。とりあえず俺の気持ちが伝わって誤解もとけたなら、それでよくね……? 長ったらしい告白とか、俺には向いてないし。
「別に……他になにかあんの?」
その俺の問いかけに、秋汰は顔を横にブンブンと振った。
何か言いたげな秋汰のことを気にしつつも、俺は一人で教室へと戻った。