教室を出て周囲を見渡すと、階段を降りようとする秋汰が目についた。
「秋汰!」
声をかけると俺に気づいたようで、逃げるように階段を降りていく秋汰。
「は、なんだアイツ……」
俺も負けじと秋汰を追いかける。
階段を降りて裏庭に出ると、秋汰は校舎の陰へと入り込んだ。
秋汰は足が早そうなイメージだったけど意外と遅く、中学生の頃運動部だった俺は簡単に追いつくことが出来た。
「おい、逃げんなって」
秋汰の肩を掴むと、小さく震えていた。
そんな秋汰を校舎の壁へと追いつめると、そこでやっと秋汰が泣いていることに気付いた。
「……なに泣いてんだよ」
「泣いとらんし……」
小さくため息をつき、親指で涙を拭ってあげる。
「どうしたんだよ」
「……花乃ちゃんとキスするん?」
コイツまであんなくだらない冗談をマジにしてるのかよ……。そんなことするわけないだろ。
「あのな、秋汰……」
「別に俺に関係ないんやけどね、つむが誰とキスしようが……ええんよ」
俺の言葉を遮るように、秋汰はそう言った。
「ちょ、話聞けよ」
「ええやん、花乃ちゃんとつむ……お似合いやし」
――コイツ……
話を全く聞かず、さらに遮ってくる秋汰に若干苛立ちを覚え、また小さくため息をついた。
そんな秋汰は相変わらず顔を隠して涙を流している。
……そんなに泣くほど嫌なわけ? それってさ、ちょっとは自惚れていいってこと?
あんなことがあったのに、また懲りずに勘違いしそうになってる自分にも嫌気がさす。