「なんか……やけに賑やかやな?」
「それな。また何かあったのかよ……めんど」
教室に近付く度に賑やかな声が聞こえてくる。こういう時は大体面倒事に巻き込まれてるような気がする、今回は俺に飛び火が来ないように祈りながら、教室へと入る。
「あ! きたきた!」
クラスの女子がこちらへ駆け寄ってきた。「げっ……マジか」なんて思っていると、その女子に背中を押され、輪の中心へと連れていかれる。
そこには花乃さんと三年生がいた。
「おはよう。今、カップルコンテストのインタビューをしているんだけど、あなたが”あの”津村くん?」
どの津村くんだよ。と思いながら、めんどくさいという気持ちが顔に出ないように気を付けながら、小さく返事をした。
「話を聞いた感じ、かなりラブラブみたいだね」
こいつら……俺がいねぇ間に何好き勝手言ったんだよ……賞金のためとはいえ、ありえねぇ……
「……そうっすね」
かなり不機嫌になりながらも、否定の言葉を無理矢理飲み込んだ。
ふと、秋汰の方を見ると、気まずそうに目を逸らしてきた。
俺だって……好きな人が目の前にいるのに、こんな嘘つきたくない。
「じゃあ、コンテストで熱いキスが見られるかもしれないってことね!」
三年生がそんなことを言うと、花乃さんは真っ赤な顔で俺に寄り添ってきた。
クラスの皆も盛り上がってるみたいで、お似合いだとはやし立てている。
「は……え、ちょ……」
――何か言い返さないと。そう思い、一瞬花乃さんの方へ視線を向けようとするも、秋汰が教室から出ていくのが見えた。
……秋汰?
「……ちょ、すみません」
俺はそれだけ言い残すと、人だかりをかき分け、教室を出た。