「……い、魁……!」

 呼びかけられる声に、寝ぼけながら目を開けると、ベッドの横には母さんが立っていた。

「ちょっと、お友達呼ぶなら言ってくれたら良かったのに」

 ……! そうだ、秋汰泊まりに来たこと母さんに言ってなかった。と、飛び起きて辺りを見渡すも、秋汰の姿は既になかった。

 は……秋汰は? 帰った? でも今日も登校日だし、今から家に帰る時間あるか?

「秋汰くんなら今ご飯食べてるわよ」

 母さんに連れられ食卓に行くと、父さんと笑いながら朝飯を食べてる秋汰の姿が。

 ……すげぇ馴染んでんじゃん。

 さすがガチの陽キャ。なんて思っていると、俺に気付いたのか、秋汰は嬉しそうに「おはよぉ!」と挨拶した。

「……おはよ」
「魁、こんなおもしろい友達がいるなら、早く紹介してくれればよかったのに」

 母さんがそう言うと、父さんも「そうだぞ」と便乗し始めた。

 ◇ ◆ ◇

 朝食を食べ終えたあと、制服に着替えて家を出た。

「おじゃましましたー!」
「はいはーい、秋汰くんまた来てね」

 母さんに見送られながら、満足そうにスキップをしている秋汰。嬉しそうで何よりなんだけど、なんか複雑。

 まぁ、昨日あんな風になってたし、笑顔になって良かったのか。

「なんで夏休みなのに俺ら学校行ってんだろーな……」
「それ考えたらアカンて! 学校行きたなくなるやろ?!」

 文化祭なんて俺が損するイベントだらけじゃん……そりゃ憂鬱だわ。

 秋汰のおもしろい話を聞きながら、重い足取りで学校へと向かった。