電気を消してベッドに潜り込むと、秋汰の肩が腕にピタリとくっついてきた。

「つむの服借りたやん?」
「うん」
「つむの匂いするから、なんかドキドキするわ」

 なんだそれ……汗くせぇってこと?
 そう思うと途端に嫌になってきた。洗濯したあとのやつだって分かってるけど、一応確認して渡せばよかったって、ちょっと後悔した。

「マジで嫌になってきたからそれ返して」
「なんでぇ?! いい匂いやん! ラベンダーやろ?」

 冗談を本気にしたのか、秋汰は慌ててTシャツを嗅ぎながらそう言った。
 いや、改めてそうやって嗅がれるの、すっげーヤダ。

 俺は小さくため息をつくと、この不快感を分かって欲しくて、秋汰の首下から腕を通して抱き寄せると、髪の毛に顔を埋めた。

「ちょ、な、なに?!」
「うっさい。黙ってろよ」

 秋汰のいつも使ってる香水の匂いがする。
 甘くて刺激的なピーチミントの匂い。

 俺は、この香りにめっぽう弱い。
 この香りのせいでいつも、秋汰を好きだって嫌でも自覚させられる。

 そう、まるで呪いみたいだ。

 好きな人の匂い、胸がドキドキしてきて、自分だけのものにしたくなる。

 俺だって、こんなふうに……どこにいても俺のことを思い出させるような”呪い”をお前に掛けたい。

 この気持ち、いっその事コイツにバレないかな。