「だからさ、俺のことは気にしないでいーから。三ツ矢さんと上手くいくといいな」

 自分でも嫌になる。吐き気のするほど生ぬるい嘘……なんで、こんなことしか言えないんだよ……
 俺はお前が好きだからって、信じてもらえるまで言える自信があればいいのに。

 とある日、寝ぼけながら言った秋汰への気持ちは、いとも簡単に”友達”として流された。
 そんなに何度も言う勇気は、俺にはなかった。

「俺も三ツ矢さんのことはもうええねん。やから、気にせんといて……?」

 秋汰はまだ俺に遠慮しようとしているのか、気まずそうにそう返した。

「マジで遠慮すんなって」
「ちゃうねん、つむ……」

 前を見ずに赤信号の横断歩道を進もうとする秋汰の手を引くと、申し訳なさそうに「ごめん」と呟いた。

「……こっち」

 横断歩道を渡らず、角を曲がった先の門を開き、中に入る。

 家の中は暗かったので不思議に思い、時間を確認すると、もうすぐ日付けを超えそうなほど遅い時間になっていた。

「そこ曲がったら風呂場だから。とりあえず風呂入ってきな。適当に服使っていいから」
「おお、ありがとうな」
「ん、その間部屋片付けとくわ」

 秋汰を見送り、階段を上って自室に入る。
 
 ……やっべ、マジで片付けないとヤバい。
 そんなすげぇ散らかってるわけじゃないけど。あの秋汰の片付いた部屋を見たあとだと、こんな汚ぇ部屋に人をあげるのは気が引ける。

 しかも自分の好きなやつ。

 掃除機ってどうやってかけんだ? いや、それより先にこの散らかった服を片付けないと。

 と、試行錯誤しながら部屋の片付けを進めた。