「なら、俺の家に来いよ」
「つむの家族に迷惑かかるやん……」
「そんなことで迷惑がんねぇよ。つか、俺友達いないと思われてるかもしれねーから。逆に安心されそう」

 そう言うと、秋汰はいつも通りの笑顔を見せた。

「なにそれ、一番の友達やのに」

 嬉しそうに微笑む秋汰。
 俺は”友達”という言葉に少しだけ表情が歪みながらも、バレないように、なるべく自然に微笑み返した。

 ……こんなに近いのに、なんで好きって気持ちだけは伝わんねぇんだろうな。

「とりあえず帰るぞ」

 もどかしさを感じながらも、秋汰の左手を引いて自分の家の方へと向かう。

「そういや、つむはこの時間までなにしてたん?」
「採寸してて、その後三ツ矢さん送ってた」
「え?! 三ツ矢さん置いてきたん? 大丈夫なん?」
「家の前まで送ったから多分大丈夫」

 そう言うと、秋汰は不自然に黙り込んだ。なにか考えているのか、呼びかけても返事がない。

「つむはほんまに三ツ矢さんが好きなんやな……」

 そして、秋汰は予想外のことを呟いた。
 そりゃ、そう言い出したのは俺だけどさ……別に俺が三ツ谷さんを好きだと思わせるようなことは、特別なにもしてないと思っていた。

 もうこの際だし、秋汰に本当のことを言おう。
 ずっと秋汰のことを騙すのも嫌だし……
 秋汰も三ツ矢さんのことが好きなのに、こんなふうに遠慮させるのはやっぱり可哀想だ。

「あのさ、それなんだけど……俺、別に三ツ矢さんのこと好きじゃない。あれ嘘、なんだよね」

 そう伝えると、秋汰は目を見開き、そのあとため息をついた。

「なんでそんな嘘ついたん……」
「秋汰だって、三ツ谷さんと俺がくっつくの嫌だからって、俺と仲良くなろーとしたんじゃん」

 ムスッとしながらそう言うと、秋汰は慌てて謝る。

「最初はそうやったけどな?! でも、そんなんもうどうでもええねん……」
「え?」
「三ツ矢さんとつむが付き合おうが……俺はつむと一緒におれたら、それでええって思っとったんに……嘘やったんやな……」

 悲しそうに呟く秋汰に、今更ながら罪悪感が押し寄せてきた。
 なんで俺……こんなやり返すみたいなことしたんだよ……俺だって、秋汰のことは好きだけど、例え秋汰が三ツ矢さんを好きだろうと……そんなの関係ない。

 邪魔するつもりなんて、本当はなかったのに……