「恋愛したことないもん同士、頑張ろうな! でも、つむはイケメンやからモテると思うんよなぁ」

 ジッと俺の顔を凝視する秋汰。
 残念ながら、俺は自分のことを一ミリもイケメンだなんて思わない。

「あ、なんか髪に付いとる。じっとしとってな?」
「マジか、サンキュ……」

 俺より十センチほど身長の低い秋汰は、背伸びして俺の髪の毛に触れようとする。
 それが申し訳なくなり、少しだけしゃがんでみた。

「目に入ったらアカンから、少しだけ目ぇ閉じとってな?」
「ん、」

 カサッと髪の毛に秋汰の手が触れる感覚がし、ゆっくりと目を開けようとしたその時……

「わ……! んぐ!」

 そんな素っ頓狂な声とともに、勢いよく秋汰がぶつかってきた。


 ――チュッ


 唇に温かくて柔らかい感触が……そして突き抜けるように、口の中に広がる甘い香りと冷たい刺激。

「――……ッ!」

 あまりの衝撃に目を開いて一歩下がる。
 そこには、同じように目を見開いている秋汰が。

 ってか、コイツ……フードなんて被ってたか……?

「お前、さ……」
「い、いや、誰かぶつかって来てん! わざとちゃうよ?」

 俺が恐る恐る問いかけると、秋汰は心配になるほど慌てふためきながら、両手をブンブンと振って否定した。

 ……まぁ、コイツの反応的に、そういうつもりでしたんじゃないのは明らかに分かる。

 でも、さっきのはやっぱり……

「そ、それじゃぁ、さっきの約束忘れんでな!」

 秋汰はそれだけ言い残して、慌てて教室へと戻って行った。


 ……最ッ悪。
 恋愛興味無いって言ったけど。言ったけどさ……


 さすがにあんなキスが初キスとか、信じたくねぇ……


「……つか、すげぇスースーする。なんでだ?」