公園のベンチの前に着いても、秋汰は座ることもなく、泣き止む様子もない。
こんな弱った秋汰を見るのは初めてで、どうすればいいのか分からず、俺も立ち尽くしたままいた。
秋汰はいつもテンション高くて、嫌なこととか悩みとかないんだろうな。なんて勝手に思ってた。
でも――こんなに弱く、震えながら声を押し殺して泣くんだ……
「秋汰、大丈夫だから。俺がいるから」
秋汰を抱き寄せ、少しだけ手を強く握る。左手で頭を撫でていると、段々と落ち着いてきたようで、秋汰はゆっくりと顔を上げた。
「親がな……喧嘩しとんねん」
震える声で、少しずつ話し出す秋汰。
俺は戸惑いながらも、最後まで話を聞いた。
「昔からずっと仲が悪いんよ……怒鳴りあって、物が壊れる音が家中に鳴り響くねん」
想像もしていなかった事情が秋汰から語られ、俺は思わず言葉を失う。……というより、なんて声をかければいいか分からずにいた。
「やから……もう嫌なんよ……」
苦しそうに瞳に涙を浮かべながらも、必死に泣くのを堪えようとしている秋汰を放っておけず、俺は思わず強く抱きしめた。
こういう時、なんて言えばいいのかわからない……でも、俺は……こんな秋汰を守りたい。
思い返してみたら、最初家に行った時から違和感があった。
妙に静かすぎて、家具や生活感がほとんどなく、空気は異様に冷たい。
こうやって喧嘩の度にものが壊れるから、家具や物が少なかったのか……と一人で納得していた。
それに、いつもこんなことがあったら一人で夜中外に出んのかよ……とさらに秋汰のことが心配になった。