それから買い出しに行ったり、採寸をしたりで、気付いたら外は暗くなっていた。
秋汰は飾り付け担当だったから、多分夕方くらいには家に帰っていたと思う。俺が買い出しから帰ってきた頃にはもう、教室にはいなくなっていた。
採寸が終わり、三ツ矢さんと教室を出て、外が暗いから送って行く。と言うと、三ツ矢さんは「じゃあお言葉に甘えて」と微笑んだ。
「にしても、複雑だよね〜」
「……複雑?」
そう問いかけると、三ツ矢さんは呆れたような表情でため息をついた。
「だって、津村くんが花乃ちゃんとカップルコンテストに出るなんてさ〜。それに、花乃ちゃんと茜くんは飾り付け担当でしょ? もう複雑すぎてビックリだよ」
まぁ、確かに。
本当は女子が飾り付け担当なんだけど、インスタで有名な秋汰は、きっと映えを熟知してると見込まれ、飾り付け担当に入れられた。
「そう思うなら、カップルコンテストの組み合わせ変えてくれたらよかったのにな」
「あの応援ムードの中、そんな事無理だよ!」
まぁ、それはマジでそうなんだけどさ……
そんな事を話しながらしばらく歩いていると、見慣れたシルエットが反対側の歩道を歩いていた。
「……秋汰?」
俺がつぶやくように名前を呼ぶと、三ツ矢さんも反対側の歩道へと視線を向ける。
「え、茜くん? どうして学校の方に? 忘れ物かな?」
心配で、秋汰の後ろ姿を目で追っていると……
「私の家、そこのマンションなの。津村くん、茜くんの方行ってきてよ。私も心配だからさ!」
三ツ矢さんはここから五メートルほど離れたところのマンションを指さしながらそう言った。
「……ありがとう、三ツ矢さん」
俺は三ツ矢さんにお礼を言うと、横断歩道を渡り、秋汰の背中を追いかけた。