そして夏休みに入ってから一日目の登校日になった。
 数日間、クーラーのついた部屋でダラダラ過ごしていたせいで、外に出るのがこの上なくダルく感じた。

 重い足取りで学校に向かい、教室に入ると、既に秋汰は来ていたみたいで、俺の方へと駆け寄ってきた。

「つむ、おはよぉ」
「ん、おはよ。来るの早くね?」

 話を聞くと、秋汰は採寸をしないといけなかったみたいで、少し早く来ていたみたいだった。

「あれ、採寸って俺はないの?」

 だって、男子はメイド服着ないといけないんだったよな……?
 そう思い返していると、三ツ矢さんも俺の方へ駆け寄ってきた。

「津村くんはカップルコンテストに出るんだから、メイド服着なくていいよ! その代わり、別の衣装用意するからさ!」
「あの……女装とか派手なやつはマジでやめて」
「大丈夫大丈夫! 任せて!」

 三ツ矢さんは得意げになっているけど、果たして任せても大丈夫なのか? と不安しかない。

 つか、カップルコンテストなわけなんだし、日常的な感じで制服のままとかで良くね……?
 なんて言っても「それじゃ目立たない」と反論されるんだろーな。

「津村くん、おはよ!」

 名前を呼ばれて振り返ると、そこには花乃さんがいた。

「おはよ」
「ね、ねぇ……あのね、津村くんのこと下の名前で呼んでもいい?」

 突然の要望に戸惑い、言葉を選んでいると……

「ダメに決まっとるやろ!」

 俺が口を開くよりも先に、秋汰によって断られてしまった。
 まぁ、確かに俺も”何で?”って思ったけどさ。

「はぁ?! 秋汰には関係ないじゃん!」
「つむは俺のなんやし、関係あるわ!」

 秋汰も花乃さんも不機嫌そうに言い合いを始めた。
 ちょ、当の本人置いて喧嘩すんなよ。

「でもいいもん! 秋汰に何言われようが、あたしと津村くんはカップルなんだし」
「え、ちょ、誤解生むようなこと言うのやめれる?」

 マジでこのままだとクラス中どころか学校中に俺が花乃さんとガチでカップルだっていうデマが流れそうで怖い。

 厄介なことに、花乃さんの友達数人もそれに加担してるみたいだし。

 ……てか、なんで俺なんだよ……
 別にお似合いでもなんでもねーだろ。俺みたいな存在感のないやつが。