「つむ、よかったん?」

 秋汰は振り返ってそう問いかけてきた。
 いいか悪いかで聞かれたら、そりゃ即答で悪いよ、もちろん。

「よくはない、けどこれ断れねぇだろ……」
「確かにそうやんな……」

 顎に手を添えて、真剣に考える素振りを見せる秋汰だけど、正直もう手遅れだし、今更「やっぱり無理」とか言えるわけないもんな……

 もう潔く諦めるしかないか……

「ちょっと、後ろ向いてる茜くん! 何か案出して!」

 三ツ矢さんは、俺と秋汰が話してるのに気付いたのか、秋汰の方を指さす。

「え、なんで俺?!」
「話に参加してなかったからだよー! ほら、早く!」
「えぇー……なんやろ、カフェとか……? ええんちゃう?」

 秋汰が咄嗟にそう答えると、三ツ矢さんはそれに賛同しながらも「ありきたりだから被りそうだよね……」と悩み始めている。

「じゃあさ、メイドカフェとかは?」

 花乃さんが手を挙げて意見を出すと、三ツ矢さんは拍手をした。

「それいいね! 定番だけど、人気出そう!」
「でもそれやと、男子はなにしたらええん?」
「え? もちろん男子もメイド服着るんだよ?」

 秋汰の質問に「何言ってるの?」と言わんばかりに三ツ矢さんは真顔で即答した。

 は……? え? 男子もメイド服着んの?
 それって、俺もってこと?
 いや、待って……俺出たくもねぇカップルコンテストに出場させられ、メイド服まで着せられて……何が楽しいんだよそれ。
 マジで、今年も高熱出ねぇかな……

「絶ッッッッ対嫌や!」

 あれ、意外とノリノリで着てそうな秋汰も、さすがにこれは嫌なのか。

「だって俺、絶対足太いもん……」

 あ、そっち?
 なんかすげぇ女子が言いそうなこと言ってるけどさ……メイド服着ること自体が嫌なんじゃなくて、足が太いから心配ってわけね?