「じゃあ、女子は花乃ちゃん……っと。男子はどうする?」

 その瞬間、また”待ってました”とばかりに、他の女子が手を挙げた。


「津村くんがいいと思います!」



 それまで蚊帳の外で、この議題は他人事だと確信していた俺は、まさか名前を挙げられるなんて思っておらず、持っていたシャーペンは手からするりと落ちていった。

「……は? え、俺……?」

 クラスの皆から向けられた視線に困惑しつつも、戸惑いながら聞き返すと、その女子は理由を説明し始めた。

「津村くんイケメンだし、最近女子から人気あるし、それに……花乃ちゃんとお似合いだし!」

 ちょ、まじで待って。色々停滞してる。
 俺はイケメンでもないし、女子から人気どころか女子と関わりすらないし、花乃さんとはマジでほぼ喋ったことない。

 つか、カップルコンテストなんだろ? 俺らカップルじゃねぇし。

「いや、あの……さ」

 どこから断ればいいのか分からずに、あたふたしていると、次第に賛同の声があがり始めた。

「この二人なら賞金あるぞ!」
「津村くんお願い!」

 時間が経つほど徐々に断りずらくなるやつだ……
 まぁ、断って恨まれるのもアレだし……適当にステージ立ってればそれでいいんだろ。多分……

「……分かったよ」

 俺は半ば諦め、めんどくさい一心で渋々カップルコンテストへの出場を承諾した。