〜そのころ side秋汰〜

 つむと靴箱で挨拶したあと、職員室に寄ってから教室に入った。
 てっきり、つむはもう教室におるもんやと思っとったけど……

「おはよ、秋汰!」
「茜くんおはよ〜」
「ああ、おはよぉ。つむまだ来とらんの?」

 三ツ矢さんと花乃ちゃんが俺の元に駆け寄ってきた。
 まぁ、そんなこと聞いても二人が知るはずないんやろうけど。

 俺が思ったとおり、二人は「さぁ?」と首を傾げた。
 笑顔で感謝を述べ、自分の席に座ると、二人は俺の机の前に立ち止まった。

 ……何やろ……?

「茜くんって、どんな人が好きなの?」

 三ツ矢さんは、こてんと首を傾げてハッキリとそう問いかけてきた。

 俺に「今目の前にいるあなた」と言う勇気なんてあるわけもなく、冷や汗が流れ始めたような気がした。

「な、なに? いきなり」
「教えてくれてもいいじゃん! 秋汰!」

 花乃ちゃんはいつもに増して、その質問をグイグイと質問を押し付けてきた。


 ――どういう人が好き、か。

 そういえば、前にもつむとこんな会話したことあったな……

「なんか茜くん考え始めちゃったね。じゃあ、花乃ちゃんが先に教えてよ!」


 そんとき、つむなんて言っとったっけな……
 まぁ、つむも三ツ矢さんが好きって言ってたし、俺と同じような感じやんな……?