「……なんだ? これ……」

 上履きに履き替えようと、自分の靴箱を開くと、一枚の便箋がパサリと落ちてきた。
 拾って見てみると”茜くんへ”と丁寧な時で書かれていた。

「これって……」

 恋愛に無頓智で知識もほぼない俺でも分かる。これはラブレターだ。
 急いで便箋の裏を見てみると、”C組 浜野陽介”と書かれていた。

 ――男? C組の浜野って、あの野球部のか……?
 つか、コイツも秋汰のこと好きなのかよ。話してるとこ見たことねぇ、いつの間に仲良くなってたんだ……?

 なんて考えてはモヤモヤしていると、後ろから肩を叩かれた。

「おはよぉ! ……あれ、どしたん?」

 咄嗟にカーディガンのポッケに便箋を隠して振り返ると、きょとんと首を傾げる秋汰がいた。

 あっぶね、見られるとこだった。
 いや、でも秋汰宛だし……。とはいえ俺が渡すのなんか不自然じゃね? 靴箱漁ったとか思われても嫌だしな……

 と、考え抜いた結果、手紙のことは隠し通すことにした。

「いや……なんでも?」
「職員室寄らなあかんから、また後でな」

 幸い、秋汰はこれ以上怪しむこともなく、階段を駆け上がっていった。


 ――まぁ、俺から秋汰に渡すのも、なんか違ぇよな。

 と、俺は正直に浜野に手紙を返そうと、C組へと向かった。