「は……?」

 頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。
 そんなこと、一度たりとも思わなかった、気付かなかった。

 だって、そんな素振り……少しも見せなかったじゃん。

 秋汰は俺の顔を覗き込むと、困惑したように視線を泳がせた。

「ちょ、そ、そんなわけないやん……?」
「この前お前がそう言ってたんじゃん」
「いや、それはちゃうんよ……」

 誤魔化そうとしてるのか、秋汰はぎこちなく否定してみるも、その男子に即座に論破されてしまう。

 なんだよ、俺を哀れんでんの? この期に及んで、今更なにを隠そうとしてんだよ。


 ――全部勘違いだった。

 俺の勝手な妄想で期待して、もしかしたらコイツと両思いかもしれないとか舞い上がって……


 俺、マジでバカみたい。



「ちょ、つむ……?!」

 もう、どうでもいいや。そう思って教室を出た俺を、秋汰は追いかけてきた。

「……何だよ」

 ダメだ。今話すと、コイツに当たってしまいそう。
 秋汰は何も悪くない、ただ俺が勝手に勘違いして、コイツを好きになって、傷付いてるだけなのに。

「あんな、つむに謝りたいねん……」
「謝る? なにを?」

 俺がそう聞き返すと、秋汰は気まずそうに切り出した。

「俺が、つむの恋愛をやめた方がええって言ったの……覚えとる?」

 ああ、言われてみれば……結構前にそんなことあったな。
 だからって、それと今なにが関係あるんだよ。

「あんとき、つむが泣いてたん見て、俺のことは言わんとこって……思っとったんよ……」
「俺のこと……って?」

 また聞き返すと、秋汰はなんで分かんないんだ? とでも言いたげな表情をした。


「……俺が、三ツ矢さんのこと好きっていうん、言わんとこって……」


 秋汰は顔を真っ赤にして、呟くように零した。