教室へ入り、秋汰の席まで向かうと、三ツ矢さんは俺らの方へと駆け寄ってきた。
「二人ともおかえり〜! もうおなかいっぱいだよ〜!」
三ツ矢さんが嬉しそうにそう言うと、秋汰は「何のこと?」と言わんばかりに首を傾げた。
「ちょ、マジで……三ツ矢さん」
「ふふ、ごめんごめん!」
俺がため息をつくと、秋汰は不満そうに頬をふくらませた。
「また俺に内緒ごとしとるんー?」
「いや、そういうんじゃなくて……」
どうすんだよ、完璧拗ねてるし……
と三ツ矢さんへ視線を送るも、ちゃっかりしている三ツ矢さんはその助けを華麗にスルーした。
「茜くんは、”好き”なんだもんね〜! おご馳走様!」
と、秋汰をからかうように、三ツ矢さんは教室から出ていった。
「……へ?! 何のこと?!」
秋汰は状況が理解出来ていないようで、俺の袖をグイグイ引っ張ってきた。
「マジでやめろよ……知らねぇよ」
「絶対嘘やん! 二人知っとる空気やったやん!」
三ツ矢さん、優しいのか意地悪なのか分かんねぇな……こういうダルい役を俺に押し付けられたような気がしてならない。
どう説明しようか迷っていると、クラスの男子が秋汰の方へと向かってきた。
「秋汰、よかったじゃん」
秋汰の肩に手をポンと乗せ、その男子はハイタッチを求めた。
「な、何が?」
秋汰が戸惑ったように問いかけると、男子はすかさず嬉しそうに返した。
「え? だってお前、三ツ矢さんのこと好きなんじゃん」