「……くん、津村くん!」

 誰かに呼ばれたような気がして、ゆっくりと目を開けると、そこには三ツ矢さんがいた。

「ぉわ、……え、三ツ矢さん……?」
「昼休みになったから、ご飯食べた方がいいって、担任に伝言頼まれて……」
「マジか、ありがとう」

 もう昼休みか。……ってことは二時間くらい寝てたのか。
 秋汰は……まだ寝てるし。

 布団の中に目線を落とすと、秋汰は布団に潜るような形で気持ちよさそうに熟睡していた。

「うん、じゃあ、教室戻ろ!」

 三ツ矢さんにそう言われ、起き上がると……

「ん……」

 秋汰がモゾモゾと動き出した。
 起こさないようにしてたのに……出来れば寝かせててあげたかったし。

「えっ、茜くん……?! 寝てるの?」
「まぁ……」

 気まずくなり、言葉を濁すと、三ツ矢さんは目を輝かせながら小さくガッツポーズをした。

 なんかさ、すげぇ……当事者よりガチじゃん。

 そんな事を思っていると、秋汰は俺の太ももあたりに手を回して掴んだ。

「……好き……」

 小さくこぼれた秋汰の一言。
 俺にだけでなく、三ツ矢さんにも聞こえていたみたいで……

「……ッッ! 津村くん! おめでとう……!」

 三ツ矢さんは嬉しいのか何なのか、涙を流しながら飛び跳ねた。

 そこまでデカい反応されたら、俺はどうすりゃいいんだよ……
 でも、聞き間違いじゃなくて、確実に……

「じゃあ、私は先に教室に戻るから! ごゆっくり〜!」

 今度はにまにましながら、三ツ矢さんはパタパタと足音を立て、保健室を出ていった。
 本当に、毎度毎度感情やら行動やら忙しい人だな。なんて思いながら、立ち上がろうとすると……

「……三ツ矢さんおったん?」
「お、秋汰……おはよ。昼休みだから飯食いに行くか?」

 とりあえず秋汰の荷物取りに、教室に戻るか。と、二人で保健室を出て、教室へと向かった。