秋汰になんて言葉を掛けていいのか考えていると、保健室のドアが開く音がした。

「やばい、担任の足音や……!」

 秋汰は小声でそう言うと、分かりやすく慌て始めた。
 コイツ……普段担任から逃げてんのか? 普通は足音で判別つくわけねぇだろ……

 そっか……秋汰、俺のせいで授業サボってんのか。

「……入れよ」

 俺が布団を捲って小声で返すと、秋汰は小さく頷いてベッドへと入ってきた。

「津村、体調大丈夫か?」

 と、担任の声がした。
 やっぱり秋汰の言う通り担任だ。……すげぇ。

「……まだ熱があるみたいなんで、しばらく休んでもいいですか」

「ゆっくり休みなさい。お大事にな」

 担任はカーテンを開けて入ってくることはなく、それだけ言い残すとすぐに保健室を出ていった。

「ふぅ……。な? やっぱ担任やったやろ?」
「普通は足音で分かんねぇよ」
「俺超能力者やから」

 ドヤ顔で言い切る秋汰に、思わず笑みがこぼれた。

「つむ、体が温かいな? 眠たなるわ……」
「熱あんのかな。早く離れないとマジでうつるからな?」
「大丈夫やろ、バカは風邪ひかんって言うやんな?」

 まぁ、どうせ授業サボってんなら、せっかくだしガッツリサボってもいいのか……?

 元はと言えば俺が巻き込んだわけだしな。

「ねみぃなら、このまま寝る?」
「……! ええの?」

 俺が提案すると、秋汰は嬉しそうに起き上がった。

「はいはい、おいで」

 俺が隣をポンポンと叩くと、再びそこに仰向けで寝そべった。

 ただ、コイツの遠慮がないとこ……良いのか悪いのか分からないけど……所謂、腕枕の体勢になっていた。

「おい、何やってんだよ」
「いやぁ、ここに手置くってことは……つむきゅん俺に腕枕したかったんやろ?」
「……うっざ」

 うざいし、無駄に距離近ぇし……
 こんな何度も至近距離になったら、普通は慣れるもんなのか……? 秋汰は誰にでも基本的に寄るし……俺がおかしいのかも。

 いや、コイツの距離感がバグってるだけで、俺は普通だと思う。