秋汰の家から逃げるように出てきてしまった。
 嫌だったわけじゃない。あの近すぎる距離も、秋汰に触れられるのも。

 でも、戻れなくなるような気がして……俺だけの気持ちが強くなりすぎるのが怖い。

 秋汰は別に俺の事なんて何とも思ってないはずなのに……あんなふうに期待させられるのが、辛い。

「明日、どんな顔して秋汰に会えばいいんだよ……」

 この時の俺には、明日俺らの関係が大きく変わることなんて……知る由もなかった。

 ◇ ◆ ◇

 なるべく遅刻ギリギリに学校へ着くように。と、普段より遅い時間にアラームを設定していた。

 いざ起きると、なんか体が熱いような気がした。それに、すげぇダルい……。多分昨日の雨のせいだ。

 学校休んでもいいけど、あからさますぎて秋汰が心配したり、自分のせいだと思ったりするのは嫌だしな……。
 それに、あの一件が原因だと思われても嫌だ。

 気だるい体を起こし、制服に着替えて家を出た。

 体が熱いうえに、マスクで熱気がこもる。
 今日は幸い風が冷たく、ひんやりして少しだけマシになった気がした。


 ――やべ、マジで頭クラクラしてきた……
 目の前ボヤけてるし、これ……ちゃんと教室まで辿り着けるか……?